ネペンテスの袋のしくみ

さまざまな種類がある食虫植物ですが、その中でも最も人気があるのが
ネペンテス。ウツボカズラと呼んだほうが、馴染み深いかもしれません。
奇異な色合い、捕虫袋に魅せられ、栽培を楽しむ方が多い人気の食虫植物です。

ネペンテス(ウツボカズラ)は、熱帯アジアを中心に広がり、東南アジアから中国南部、オーストラリア北部、マダガスカル、セーシェル諸島など、さまざまな地域に自生しています。

世界各地に分布しその中で低地に育ち高温に強いもの、山岳地に自生し冷涼な環境を好むものなど
ふるさとの環境により育て方が変わってきます。

今回は、まずネペンテスの特徴を知り栽培をする準備をしましょう。

この記事の内容
ネペンテス(ウツボカズラ)袋のしくみ
ネペンテス(ウツボカズラ)と動物の共生関係

ネペンテス(ウツボカズラ)の袋のしくみ

▮葉のつくり
ネペンテス(ウツボカズラ)は葉先から伸びる蔓の先端に「捕虫袋」を形成し、虫を捕まえて栄養を補給します。
この袋は葉が変化したもので、捕虫袋(葉身)、蔓(葉身と葉柄の接続部)、葉柄の
3つの部分から構成されています。


葉柄が普通の植物の葉身のように広がり葉身が捕虫袋に変形しています。
葉身と葉柄の間は蔓になり伸びています。
葉柄が作られ、蔓が伸び捕虫袋が完成します。

成長の早い種類では年間に10枚ほどの葉を展開し、捕虫袋をつけます。
捕虫袋の寿命は長く1つが半年くらい機能します。

▮袋の中の液体は?

捕虫袋は最初口を閉じているがその時にすでに袋の中に液体をためています。
この液体は抗菌作用がありバクテリアの発生を抑えています。
口は開くと閉じることはありません。
口を開いた捕虫袋の中の液体は分泌を続けますが雨水も加わっていきます。
口が開く前の溶液は人間が飲んでも害がありません。

 

▮捕虫袋の消化メカニズム

ネペンテスの捕虫袋は、中に入った虫が逃げられないよう巧妙に作られています。

  • つるつるした内側
    捕虫袋の内壁は滑らかで、ロウ物質が分泌されており、袋の中に入った虫が滑って登れない仕組みになっています。また、袋内の消化液に溺れてしまいます。
  • 「ししおどし」のような水調節機能
    雨水が袋に入って重くなりすぎた場合には、袋が自然に傾いて余分な水をこぼす仕組みがあります。これにより、捕虫袋は常に一定量の消化液を保つことができ、機能を損なわずに虫を捕らえ続けることができます。

 

▮虫をおびきよせる工夫と不思議

・虫をおびきよせる工夫

ネペンテスは、色鮮やかな捕虫袋と甘い蜜を使って虫を引き寄せます。
袋の口や蓋からは香り高い蜜が分泌され、これを食べに来た虫が滑って袋の中へと落ち込むようになっています。
袋の内部も滑りやすく、虫はもがいても這い上がることができません。

・2種類の捕虫袋が作られる不思議

ネペンテスの中には成長段階に応じて異なる捕虫袋を作ることができ、さまざまな種類の虫を効率的に捕らえる種類もあります。

低層部の捕虫袋
地面近くに作られる袋は大きく、地面を這う虫がターゲットです。袋の形も横に広がるように作られており、這う虫が入りやすくなっています。

高層部の捕虫袋
成長が進み、茎が高く伸びると、飛んでいる虫を狙うために細長い捕虫袋を作ります。高所に適した捕虫袋となっています。

面白いことに低層部と高層部の捕虫袋は口が向く方向が異なっている。

ネペンテスは、低層と高層、そして中間層と成長に応じたさまざまな捕虫袋を作ることで、その生態系の中で多くの栄養を効率よく吸収できるように工夫されているのです。

袋の内部には抗菌作用のある液体が分泌されており、これにより虫を効率的に消化できる構造が作られています。

 

ネペンテス(ウツボカズラ)のエサ

ネペンテスの獲物はアリが多いがクモ、ムカデもよく落ちます。
袋に落ちた虫などを鳥が食べに来たりネズミなど小動物が袋の水を
飲みに来ることもある。まれに鳥やネズミがうっかり落ちてしまうこともあります。

ネペンテスはクモが壺の内側に潜み獲物を横取りすることが多く見られる。クモが獲物を食べ、食べ残りなどが壺の中に落ちおこぼれをもらう。またクモが糞を袋に落としそれらも栄養源としています。
東南アジアではネペンテスの内側で暮らす生き物は100種以上確認されています。

 

ネペンテスと動物の共生関係

ネペンテスの捕虫袋は、虫を捕らえるだけでなく、以外にも他の動物との共生関係も見られます。

ネペンテスと哺乳類

ヤマツパイ、タカネクマネズミ

ボルネオに自生するラジャ,ローウィーと哺乳類(ヤマツパイ、タカネクマネズミ)は相互依存的な関係があります。ネペンテスは捕虫袋のふたから蜜を出し動物に食べさせ動物はの中に糞をする。ラジャの袋は大きいためツパイやクマネズミは袋の縁に立ち蜜を食べます。その体勢だとお尻がちょうど袋の口に位置します。
動物たちは蜜を食べ始めるとすぐに排便をはじめます。
ヤマツバイは昼間、クマネズミは夜に来ることが観察されています。

動物は新鮮な蜜を得て植物は糞の養分を得ています。

 

ネペンテス・ヘムスレヤナと小型コウモリ

ネペンテス・ヘムスレヤナは捕虫袋の内部に寝床を提供し、ハードウィック・ウォーリー・バットという小型コウモリがその中で眠ります。
ヘムスレヤナは他の種と比べ袋が長く袋の中の液体が少ないため
袋内部はコウモリが眠るには都合の良い寝ぐらになります。
コウモリは袋の液体の中に糞をし、植物はその養分を吸収しています。
コウモリは雨風や寄生虫から身を守り、植物は養分を得ています。

 

さらに、東南アジアでは、ネペンテスの壺の中で暮らす生物が100種以上確認されており、生態系の多様性が際立っています。

このように、植物と動物が相互に栄養を供給し合う共生関係が築かれているのです。

 

ネペンテスとカエル

ネペンテスの袋の中で産卵し暮らすカエルがいます。
ネペンテス・ビカルカラタ、ヒルスタの袋の中に産卵するカエルは
袋の中の酸性の液体からオタマジャクシを守るため大きな卵を2~3個だけ産む。
酸性の液で泳がなくてよいように卵の中で泳ぎ成長しカエルになったら出るようです。

ヒメアマガエル
袋の液体への耐性を持っています。アンプラリアの中に産卵しオタマジャクシ
は壺の中を泳いで成長しカエルになります。産卵するときは戻ってきます。

ネペンテスと鳥

メグロメジロ
ボルネオ島固有種のメグロメジロは
ネペンテス ローウィーの捕虫袋の口の縁に止まり蜜を食べ糞を壺に落とします。

植物は虫を消化するより糞のほうが養分を吸収しやすい

ネペンテスと人間の生活

人間は植物との関わりを持ちながら生活しています。
ネペンテスが自生する地域の人たちは昔から身近なネペンテスを生活に利用してきました。

料理
ネペンテスの袋を料理に使う伝統は何世紀も前からあります。
ネペンテスフーケリアナの袋に米を詰めて調理するウツボカズラライス「ペリウラ・ケラ」がある。
袋は食べず、器として使います。ウツボカズラで炊くと米に独特の風味がつき、美味しいようです。

 

医療
・伝統医療でもネペンテスは使われてきました。
捕虫袋の蓋が開く前のを閉じた袋の中の水はジャングル奥地を探検するときに貴重な飲み水の供給源になり胃の不調、呼吸器系の不調などに効くといわれてきました。

・茎や根を煮てマラリアや胃痛の薬に利用されます。

・ネペンテスミラビリスは漢方薬として尿路感染や高血圧の治療として使われています。

 

まとめ

奇異な色合い、捕虫袋に魅せられ人気のネペンタス(ウツボカズラ)ですが
捕虫袋は葉が変形したものです。
その名の通り虫を食べる食虫植物はさまざまな工夫をして虫を捕らえています。
また以外にも虫や動物と共存している関係もあることを知りました。
ネペンテスと人の関わりがあることも知ることができました。

 

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