デンドロビウムの全体像|原種1600種の多様性と主要4系統(ノビル・デンファレ・フォーモサム・キンギアナム)

ラン

デンドロビウムとは

デンドロビウムは、胡蝶蘭・シンビジウム・カトレアと並び、広く親しまれているラン科植物のひとつです。
学名は Dendrobium。読みは「デンドロビューム」または「デンドロビウム」と呼ばれています。

この名前は、1799年にスウェーデンの植物分類学者オロフ・スワルツによって命名されました。
ギリシャ語の「Dendron(樹木)」と「bios(生命・生活)」を組み合わせた言葉で、「樹上で生活する」という意味を持ちます。

その名の通り、デンドロビウムは樹木や岩などに着生して生きるランです。

原種は1600種以上ともいわれ、現在も新種が発見されるなど、ラン科の中でも非常に大きな属のひとつです。
分布は広く、熱帯アジアを中心に、日本からニューギニア、オーストラリアにまで及びます。

日本にも
セッコク(Dendrobium moniliforme)
キバナセッコク(Dendrobium tosaense)
といった原種が自生しています。

環境の変化が生んだ多様性

デンドロビウムが広く分布するアジア・オセアニア地域では、造山運動によって複雑な地形が形成されました。
ヒマラヤ山脈やニューギニア島中央高地などに代表される山岳地帯では、やがて熱帯山林が発達します。

こうした産地の森林では、1日のうち数時間は雲の中に入るほど湿度が高く、樹木にはコケが垂れ下がり、その間にシダ類が生えています。

まさに、地面とは別に存在する樹上の世界です。

地上とは異なる立体的な空間には、谷や尾根のような起伏があり、場所ごとに微妙に異なる環境(微気候)が存在しました。
この多様で複雑な環境が、新たな進化を促し、デンドロビウムに驚くほどの形態的変化をもたらしました。

現在見られる多様性は、こうした環境の積み重ねによって生まれたものなのです。

デンドロビウムの最大の特徴 ― 形態の多様性

デンドロビウムの魅力は、茎(バルブ)・葉・花の形態が驚くほど変化に富んでいることです。

■ 茎(バルブ)

  • 直立するもの
  • 這うように伸びるもの
  • 下垂するもの

長さも数ミリの極小種から、5メートル近くになるものまであります。

形も

  • 針金状
  • こん棒状
  • 球状
  • 平たいもの

など多様です。

■ 葉

  • 細いもの
  • 丸いもの
  • 薄いもの
  • 多肉質で厚いもの

種によって姿は大きく異なります。

■ 花

花の形や性質も実にさまざまです。

  • 甘い香りのもの
  • 爽やかな柑橘系の香り
  • 人によっては独特に感じる匂いを持つもの

花持ちも、

  • 数時間で終わるもの
  • 1輪で半年以上咲き続けるもの

など幅があります。

この多様性こそが、デンドロビウム属の奥深さです。

園芸で親しまれる4つの系統

ここでは、一般に広く栽培され、私たちが店頭で目にする機会の多い園芸品種を、4つの系統に分けてご紹介します。

■ ノビル系

最も広く普及しているタイプです。
原種 Dendrobium nobile を中心に、多くの原種が関わって改良されてきました。

ヒマラヤ山麓から東南アジアの標高1000~1500mの山岳地帯に分布し、
夏は高温多湿、冬はやや乾燥し気温が下がる環境で育ちます。

この季節変化が、冬から春にかけての豪華な開花につながります。
冬の花の少ない時期に華やかに咲く姿は、園芸植物として大きな魅力です。

年末から春先にかけて店頭に並ぶデンドロビウムの多くがこの系統です。

■ ファレノプシス系(デンファレ系)

原種 Dendrobium phalaenopsis に由来します。
オーストラリア北部やニューギニアの高温多湿地域に自生します。

花姿がファレノプシス(胡蝶蘭)に似ていることからこの名で呼ばれ、
春から夏にかけて流通することが多く、夏の洋ランとして知られています。

■ フォーモサム系

原種 Dendrobium formosum に由来します。
高冷地から湿潤な地域に分布し、白を基調とした清楚な花が特徴です。

日本では春先から初夏にかけて見かけることが多い系統です。


■ キンギアナム系

原種 Dendrobium kingianum に由来し、オーストラリア原産。
岩場に着生し、比較的低温に強い性質を持ちます。

日本にも古くから導入され、耐寒性の高さが評価されてきました。

デンドロビウムはなぜ親しまれてきたのか

1800年代半ば、ヒマラヤ周辺で発見されたデンドロビウムは、その清楚な美しさによってヨーロッパの人々を魅了しました。
その後、多くの原種が発見され、交配育種が進められました。

150年以上を経た現在、デンドロビウムはラン科の中でも特に親しまれるグループのひとつとなっています。

多様な姿、多様な環境、多様な咲き方。
その背景には、地面とは別に存在する樹上の世界で育まれた進化の歴史があります。

まとめ

デンドロビウムは

  • 原種1600種以上を誇る巨大属
  • 分布域が広く環境適応力が高い
  • 茎・葉・花の形態が非常に多様
  • 園芸では4つの主要系統が中心

という、非常に奥行きのあるランです。

「デンドロビウム」という名前の中には、まったく異なる性質を持つ植物たちが含まれています。

ぜひあなたの好みのタイプを見つけ栽培にチャレンジしてください!

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